2012年9月24日月曜日

今を生きる 「星の旅人たち」


  やっと実現!
先日、映画「星の旅人たち」を見に行きました。映画関係の仕事をしている知人から「素晴らしい映画ですよ!」と紹介され、見に行く予定が二回も流れてしまいました。DVDになってから見ようと思いつつも、何か気になり「まだどこかで上映しているかもしれない?」とヤフーの映画欄で検索するとまだ上映しており、やっと実現しました。あれから4か月になり、もう関東地方では最後の上映かな?と思います。

ミニシアターの川崎市アートセンターですが、5年前から川崎市の運営でなされていますが、特筆すべき作品だけを上映しているようです。ミニシアターですが、なかなかきれいで、当日は、席の半分が埋まっていました。男性が多いのではと思いきや、7割が女性でした。ちなみにヤフーの映画欄では、この映画のユーザー評価は、5点満点評価で4.2点の高得点です。

     ★マーク5つ
 期待を裏切ることのない、とても素晴らしい映画でした。私は、★マーク5つを付けました。初老の男、アメリカ人眼科医のトムは、妻が死んでから疎遠になっていた一人息子ダニエルの旅先での事故死の知らせに、途方に暮れる。息子は、サンテイアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の初日に、嵐に巻き込まれ、不慮の死を遂げる。息子・ダニエルは、何を想い、旅に出る決意をしたのか?トムは、父としてその真意を確かめるべく、亡き息子のバックパックを背にサンテイアゴ・デ・コンポステーラへと旅立つのである。
サンテイアゴ・デ・コンポステーラには、聖ヤコブ(スペイン語でサンティアゴ)の遺骸があるとされ、エルサレムやローマと並ぶキリスト教3大聖地のひとつ。フランス各地からからピレネー山脈を越えてスペイン北部を通るサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路は、800kmの道のり、1200年の歴史、年間10万人が全世界から巡礼の旅に訪れる。“コンポステーラ”とは、「星の平原」と言う意味があり、世界でも珍しい世界遺産の一つである。

     巡礼の旅とは?
巡礼と聞くと、四国八十八ケ寺巡礼の旅をまず思い出し、そのイメージは何かつらい、苦しい禁欲的なイメージがあります。しかし、この巡礼路は、旅そのものが楽しく、景色の美しさ、旧跡の素晴らしさ、食べ物も良いものがあり、ふれあいの楽しさがあふれます。宿泊はと言えば、一泊15ユーロ(約1500円)のびっしり並んだベッドで寝る安宿、頼りない野宿もあれば、カードを使った豪華ホテルの宿泊もある。主人公を入れた4人連れは、一人また一人と増えていくのがなかなかよく、私も観客として道連れに入れてもらい、800kmの巡礼路を旅しました。

それにしても、普通のウオーキングだと10分で1000歩、一歩が約0.7メートルですから1時間で4.2キロメートル、1日7時間ですと約30キロメートル弱になります。このように計算しますと約1か月を要す道のりで、楽な道ではないことが分かります。

     旅の目的
4人の道連れは、実に個性的で面白い。旅の動機や目的は人それぞれで、ある人はダイエットの旅、もう一人は禁煙のための旅、さらに一人はスランプから脱するための旅。そして主人公は、息子の思いを探るために“自分探しの旅”である。この4人の出会いの様子、会話、ハップニング、時にぶつかり合う様子、他の巡礼の方々とのふれあい等が実に興味深いのです。主人公は、息子が旅しようとした巡礼の地を息子のリュックと遺灰を背負い歩く事を決意、そして実行に移しますが、行く先々で息子の存在を感じながら、巡礼者の人々との交流を得て、いつしか息子との関係を見つめ直していくのです。

 サンティアゴまでの長い道のりは、世界遺産が舞台でロケーションも素晴らしく、心に響く見応えがあります。目的地・サンティアゴ・デ・コンポステーラ の教会での静かな盛り上がり、ラストシーンも余韻が残ります。映画の途中、何度か涙が出るのを抑えられませんでした。

見終わってから、もう一度すぐにでも見たいものだと思わされました。こんなことを感じた映画は、ほとんどありません。映画の流れは、驚くほど良く覚えているので、それを確かめる必要はありません。もう一度見ながら、自分に向き合って、我が人生の問い直し、見つめ直しをしたいのかもしれません。今こうして書くことを通して、それをさせていただいています。

映画を見終って帰りの途中、近所にお住いのカトリック教会信徒のSさんご夫婦にお会いしました。今こんな映画を見て来たことをお話すると、ご夫婦は、20年ほど前に同じ道ではないけれど、似たような場所を20日間かけて旅行された由!「素晴らしいところだし、君も若いのだから、ぜひ行ってらっしゃい!」と励まされました。同じ旅をするにしても、このような巡礼の旅もまた良いものかなと思っています。

2012年9月24日    小坂圭吾