関心があると見える
私はコーヒー好きで、1日1-2杯は自分でコーヒーを入れて飲みます。コーヒーショップは、値段の高いところは抵抗を感じ、安くておいしい所、よく利用するのがドトールコーヒーです。今や国内に1500店舗を構える日本最大のコーヒーチェーン、“たかが200円コーヒー”と言いますが、かなり前になりますが、全身全霊を賭け育て上げた名誉会長・鳥羽博道氏からドトールコーヒー誕生のお話を聞きました。
今から40年ほど前に、鳥羽さんが喫茶業界のヨーロッパ視察ツアーに参加したときのことです。「朝シャンゼリゼを歩いていると、地下鉄の駅から出てきた通勤客の多くが、近くのカフェに次々と入っていく。つられて店内に入ったら、驚き!テーブル席が空いているにもかかわらず、立ってコーヒーを飲む客。不思議に思ってメニューを見ると、値段が違った。テラスで飲むと150円、店内のテーブル席だと100円、立ち飲みだと50円。これだ!と思いましたね。」これこそが喫茶店の最終的な業態ではないかと思った鳥羽さんは、ドトールの誕生をこの時思い付いたとのことです。
その現場をツアーで一緒の人たちも見たのですが、鳥羽さんは、この喫茶業界の先々はどうしたらよいか?の強い問題意識を持って行かれたので、その現場を見てひらめいたのです。本人の言葉を借りれば、「関心があると“見える”」のです。関心、問題意識が無ければ、見ていても見えないのです。
「翼よ、あれがパリの灯だ」
もう30年以上も前のことですが、アメリカ・ワシントンにあるスミソニアン航空宇宙博物館を訪ねたことがあります。そこには、歴史に残る飛行機やロケットの実物が所狭しと展示されており、初めて宇宙を飛んだというアポロ宇宙ロケットもありました。博物館の入口に入ってすぐのところには「翼よ、あれがパリの灯だ」で知られる、ニューヨークからパリまで33時間半に及ぶ飛行に成功したリンドバーグのスピリット・オブ・セントルイス号が吊り下げられていました。まじまじと良く見たことは覚えています。
ところで、この飛行機の窓はどこにあるのでしょうか?「翼よ、あれがパリの灯だ」との感激の言葉からして、操縦席の正面の窓から見えた光景に感動し、この言葉が出たであろうと考えます。実は、座席からは直接前方が見えず、機体側面の窓から顔を出して前を見なければならなかったのです。可能な限り空気抵抗を減らすことを優先し、窓はわずかに胴体の両側に小さく取り付けらるのみとなったのです。リンドバーグは、その小さな横窓からパリの灯を確認したのです。スミソニアン航空宇宙博物館でしっかり見たのですが、実はそうではなく、見たつもりになっていて実はよく見てなかったという実例です。(写真は、その時に撮影したものです。)
見ていても見えない
私たちの毎日の生活において、“見ていても見えない”ことがなんと多いことでしょう。たとえば「神の恵み」についてですが、数えて見よ主の恵み(神の恵み)とあるごとく、数えだしたら数え切れないほど神の恵みはあります。そうは思っていても、正直それを数えることをしません。
では、「神の恵み」とは何でしょうか。「神の恵み」とは、ふさわしくない者に神が与えてくださる良きものです。”ふさわしくない者に”がポイントですが、これが実に分かっていない自分があります。当然のことのように思っていることが、実は“恵みだ”ということが多くあるのです。心で分かっていないために見えないのです。
先日も帰宅途中に「どうも今日はいやな事が多かったな」と思いつつ、コーヒーショップに入り振返ってみました。そして、良かったことや、うまく行った事柄をとにかく挙げてみました。神の恵みをとにかく数えてみました。出てきました。かなりーーー。自分の努力で無く恵みだと思うこと、素晴らしいことが上がっていました。自分で良いことを見ていてもそれが見えず、悪いことや失敗のみが見えて、今日はイマイチだったと失望しがちです。静かに考えてみれば、見えてなかったことが案外見えてくるのです。神の恵みが実感できるのです。
「あなた方は、ーーー見るには見るが、見えない。ーーーその耳は聞えにくくなっていて、その目は閉じている。」(マタイ13:14-15 現代訳)
2014年9月9日 小坂圭吾