2020年10月26日月曜日

コーヒーブレイク「『現代訳聖書』が新しくなりました」

 

現代訳聖書・改訂新版
新しい現代訳聖書

『現代訳聖書(旧新約)』を、111日に「改訂新版」として新しく刊行いたします。1983年に初版が刊行され、「読むだけで分かる聖書」として多くの人に親しまれてきましたが、多くの皆様の祈りと尊い献金に支えられて、ここに改訂新版刊行の運びとなりました。

初版を発行してから、部分的に改訂をしながら10版まで重ねてきました。それ以降、印刷の前工程のシステムがデジタル化により大きく変わり、10版で使用した組版が使用できない状況となったため、一連の組版作成作業を一から行なう必要が生じました。

言葉は二、三十年で変わるという常識から、本文の見直しも全面的に行なう必要を感じ、5年ほど前から大幅改訂の作業に取り組みました。具体的には、現代訳聖書翻訳者の尾山令仁先生ご自身による本文の見直しを行い、修正は数千箇所にのぼりました。

また、現代訳聖書翻訳委員会(主宰:小坂直人)による日本語の推敲と修正を行いました。日本語自体を見直す作業で、古い言い回しの修正、送り仮名の変更、漢字とひらがなの使い分け、句読点の調整、接続詞や代名詞や敬語などの調整等々、時代の流れと共に言葉も変化することを踏まえ、約3万箇所を修正しています。

言葉は世の中の動きと共に変化します。数年前に広辞苑が10年ぶりに大改訂され、新しい項目が約1万項目も追加されたことは記憶に新しいところです。新聞で使われる言葉も毎年のように更新されているようですが、それらの情報も取り入れ、日本語の見直しを進めてきました。

現代訳聖書ができるまで

『現代訳聖書』は、日本人への伝道牧会の現場から生まれた聖書です。1953年、神学校を卒業した尾山令仁牧師は、開拓伝道に励みながら聖書の私訳に取り組み始め、聖書講解書や月刊誌『羊群』に連載していた講解説教に付ける形で翻訳を進めました。

私が学生の頃、尾山先生がWKGKで創世記の学びを指導しておられ、そこで私訳に基づいてお話されていたことを思い出します。その後、『新改訳聖書』の翻訳委員としての責任を担う中で、「読むだけで分かる聖書」の必要性を強く感じるようになりました。

そのような時に、アメリカ聖書協会の翻訳者であり、言語学者のユージン・ナイダ博士の「ダイナミック・エクイバレンス」という翻訳原則に出会います。

これは、従来行われてきた「原語に忠実」という翻訳原則ではなく、歴史、社会、文化の違いを考慮に入れて「原文の意味に忠実」に訳すという原則であり、ウイックリフ聖書協会や一般の翻訳書において採用されている翻訳原則です。

この原則に基づき、“キリスト教の背景を持たない日本人にも分かる聖書”を目指して翻訳が進められ、198310月に旧新約聖書66巻を『現代訳聖書』として刊行するに至りました。費やした年月は30年、刊行後も随時手を加え、版を重ねる度に改訂を行なってきました。

現代訳聖書・刊行の意義

聖書を翻訳によって分類すると、「原語に忠実」な聖書と「原文の意味に忠実」な聖書の2種類に分けられます。『新改訳聖書』、『新共同訳聖書』等が前者の“原語に忠実な聖書”であり、『現代訳聖書』が後者の“原文の意味に忠実な聖書”になります。

「原語に忠実」に訳した場合、2千年以上も前の原語をそのまま訳すわけですから、当時と風俗習慣が違う私たちには理解できず、良くわからないことが多々出てきます。時代背景が異なる上に、ユダヤ的表現法が随所に見受けられ、昔の度量衡や貨幣が出てくる等々、理解を困難にしています。

「原文の意味」に忠実に訳すという翻訳原則で訳された聖書は、英語圏では十数種類出ており、多くの人に読まれております。「『現代訳聖書』を読むと、意味の分かりにくい箇所がよく分かる」というご感想をいただくことがよくありますが、それは、歴史、社会、文化の違いを考慮に入れて、「原文の意味」に忠実に、原典に聖書解釈を加えながら訳していることによるものです。

今回の改訂に当たり、多くの資金が必要となり、3年にわたって献金のお願いをしてきましたが、必要額が満たされましたことをここにご報告し、感謝を申し上げます。主なる神様に賛美と感謝をささげます。

私たちはこれからも、「読みやすく分かり易い聖書」を出し続けていきたいと願っています。日本人の多くは、八百万の神しか知らず、99%の人々が真の神さまを知らない状態です。聖書は隠れたベストセラーかつロングセラーの本ですが、日本では多くの方々が積読(つんどく)状態にあるのではないかと思われます。

ですから現代訳聖書刊行会の使命は、現代の日本人に「読みやすく分かり易い聖書」を届けていくことにあると考えています。一人でも多くの日本人に聖書を読んでいただくために、この『現代訳聖書』が用いられることを心から願ってやみません。

20201026日    小坂圭吾(現代訳聖書刊行会・代表)

 

■現代訳聖書刊行の歴史

197811月 現代人の聖書(新約)初版発行

198310月 現代訳聖書(旧新約)初版発行

198912月 現代訳聖書(新約普及版)初版発行~小見出し・脚注付き

199411月 現代訳聖書(旧新約)6版発行~小見出し付き

200004月 現代訳聖書(旧新約)8版発行~小見出し付き・文字大きく

200405月 現代訳聖書(旧新約)10版発行~小見出し付き・文字大きく

201601月 現代訳聖書(旧新約)日本語の見直しを開始         

201704月 現代訳聖書(新約11版)電子書籍版(キンドル版)発行 

  

202011月 現代訳聖書(旧新約)改訂新版発行~小見出し付き・文字大きく