2010年5月8日土曜日

祈り「大統領リンカーンの生涯に学ぶ(1)」

     リンカーン記念館  
少し前になりますが、アメリカで歴史上最も尊敬できる人物について世論調査をしたところ、1位はイエス・キリスト、2位はリンカーンだったとのことです。リンカーンがどれほどアメリカ人や世界の人々から愛と尊敬を受けているかを実感させてくれるものです。オバマ大統領も、尊敬する大統領としてリンカーンをあげています。私たち日本人の場合は、リンカーンといえば、小さい頃に伝記で読んで何となく記憶に残っているか、奴隷解放と南北戦争を勝利した大統領という程度の知識かもしれません。

  今から30数年前に初めてアメリカに出張した時、ワシントンを訪問し、国会議事堂、ホワイトハウス、大統領が日曜礼拝に行く教会そしてリンカーン記念館を訪ねました。リンカーン記念館にあるリンカーンの座像は、今でもはっきりと覚えています。建物の入り口中央に置かれている巨大な石像は、両腕をひじ掛の上に乗せて、厳粛な雰囲気をかもしだしています。周囲を散策しながら、これほどまで巨大な建物の記念館を作ったのには、アメリカにとって偉大な尊敬する人物だからであろうと推察しました。クリスチャンであることは知っていましたが、それ以降、リンカーンについて深く学ぶこともありませんでした。 

     ホワイトハウスを祈りの家に
  
先日、「ホワイトハウスを祈りの家にした大統領リンカーン」(ジョン・クアアン著、小牧者出版)を読みました。この本を通して、リンカーンがどれほど信仰の人であったかを知り、大きなチャレンジを与えられました。著者は、韓国の牧師として聖書を愛する運動を広げていくという使命を持ち、神様の働きに力を注いでいる方です。

彼の言葉によると、「すでにリンカーンに関する本は数千冊に及んでいる。私も多くの人たちの本と資料を参考にし、彼の生涯を信仰の面から整理して見た」とあるとおり、彼の人徳と業績の背後にある信仰面の素晴らしさが、ほんとに良くわかります。韓国でスーパーベストセラーとして多くの人に読まれています。

リンカーンの生涯を通して教えられたことがいくつかあります。第一が、彼のお母さんが素晴らしいクリスチャンで、リンカーンに「信仰」と「夢」を植え付けたことです。「神さまのみことば通り生きなさい」とモーセの十戒が心の奥深くに焼きつき、その通りに正直に生きる原動力になったのです。

彼が9歳の時に母がこの世を去りますが、次の新しい母も素晴らしいクリスチャンで、良く聖書の話を聞かせてくれ、信仰の目を育ててくれたのです。特に、彼に読書の習慣を育ててくれ、まれに見る「本の虫」と呼ばれて独学で勉強をしながら、創造的なリーダーとなりました。彼は、学校らしい学校教育を受けていませんが、読書に専念し、よい文章があればメモを取り、繰り返して読んで自分のものとしました。彼は、毎年自分の身長ほどの本を読むことを目標にしたとのことです。
      
     さばくな!  
彼の生涯を貫き通していることは、聖書を読み、祈り、聖書の言葉に生き抜いたことです。彼も罪びとであり多くの過ちを犯しました。あるいは、犯しかけながらも留まりました。犯した過ちについては、それが聖書の言葉に照らした時に、もう2度とやらないと心に焼き付け、犯しそうになった時に冷静に踏みとどまって、神の心にかなうような行動に自分を仕向けたのでした。特に「さばいてはいけない」「自分の敵を愛せよ」のことばを実行したのです。

我が身を振返る時、自分の敵とまでは思わなくとも、すぐに心の中で人をさばいたり、悪く思ったりすることは誰でもあります。批判する、悪く言うことはいとも簡単に行なってしまいます。人をほめ建てあげることがいかに少なく、度量の狭い人間であるかを思い起こすのです。

リンカーンは、弁護士時代に不満に思う若手政治家を非難しまくって、相手を大憤慨させ命がけの決闘を申し込まれ、命を失う危機に立たされました。ミシシッピ川の川辺で決闘となり、決闘直前に友人たちの仲裁により、彼の謝罪を受け入れ、血を見る決闘にはなりませんでした。この出来事が、リンカーンに大きな衝撃となり、今後他の人を批判する、悪く言うことをしないと決心したのです。

アメリカの歴代大統領が就任式では、大統領が自分の好きな聖書箇所を選び、就任の宣誓をして、聖書に口づけをして神様のことばに対する畏敬の念を表します。リンカーン大統領が特に好み、選んだ聖書箇所は、次の御言葉です。
 
「さばいてはいけません。さばかれないためです。」(マタイ7:1)

2010年5月8日    小坂圭吾