順境もあれば逆境もあり
人生には、順境もあれば逆境もあります。「順境」とは、万事が具合よく運んでいるような境遇を言い、その逆が「逆境」です。この順境、逆境について何を基準にするのか、その判断は意外と難しい。“災いを転じて福となす”との言葉がある通り、時が経過しなければ判断できないのですが、逆境は、私たちすべてが免れないくらい多くあるものです。
「ホワイトハウスを祈りの家にした大統領リンカーン」(ジョン・クウアン著、小牧者出版)を読んだ時、リンカーン大統領が、どれほど失敗と挫折を重ねたかを知り驚きました。彼ほど逆境の中でありながらも、偉大な功績を残した人はいないのではないでしょうか。逆境に始まり、逆境の中に働き、逆境に終わった人と言ってよいかもしれません。
母をなくし、次男・三男を失い、事業に失敗(2回)、婚約者を亡くし、州議会、下院、上院、副大統領各選挙に落選が計6回。大統領になっても、奴隷解放、南北戦争のために内外において、多くの逆境と戦う日々でした。オバマ大統領もあこがれる素晴らしい人徳と業績を残す大統領・リンカーン、その挫折そして逆境を乗り越えた力こそが、信仰の力です。
新渡戸稲造という生き方
新渡戸稲造(にいとべいなぞう)博士~~世界的なベストセラー「武士道」の著者、偉大なる教育者、「国際平和の使者」と呼ばれたクリスチャン、旧5千円札の人~~彼の名著「修養」の中に、逆境について書いてある章があります。
逆境・災いには二つの種類があり、一つは自分自身で作る自業自得、もう一つは天の授ける天命、運命である、と書いています。いずれが多いかと言えば、自ら作る方がはるかに多いのです。
博士は、逆境だと思っている人の傾向として、ヤケになりやすい/他人のことを羨(うらや)ましく思う/他人を恨(うら)みやすくなると言っています。逆境に陥った理由を謙虚に自分に求めて、それは自分の責任であると思わない限り、逆境からの脱出はできないと忠告しています。
逆境を好転させるには、それに陥ったならば、これを避けることは悪いことではないが、逆境に耐え忍び、逆境の中から一つの修養の材料を求めて「善用」することを勧めています。人生を肯定的に捉えて「すべて善きこと」として受けて、積極的な生き方をしていこうということです。
七転び八起きの信仰
リンカーンは、「失敗と不幸」をいやというほど味わいながらも、それを次の礎石として用いたのです。大統領になる前の彼は、政治家、事業家としての失敗に対して決してあきらめず、失敗という障害物を飛び石に変え、倒れても素早く起き上がり、自分の失敗原因を分析する知恵を、神様に求めました。
リンカーンは答えています。「サタンは、私が失敗するたびに『もうお前は終わりだ』とささやきます。しかし、神様は、『今回の失敗を教訓とし、さらに大きなことに挑戦しなさい』と言われました。私は、サタンのささやきより、神様の声に耳を傾けたのです。」
最後まであきらめないリンカーンは、人生に困難が訪れるたびに聖書の言葉をますます愛し、“失敗も不幸も”神様を愛する者にはすべてのことが働いて益となることを信じました。ですから、ますます謙遜になり、忍耐と強い信仰の持ち主となったのです。
リンカ-ン大統領時代のエピソードは、沢山あります。リンカーンが大統領に就任して最初の演説の時、彼を嘲笑しあざ笑う上院議員の無礼な攻撃に対して、全く不快感を表さず、温和な言葉で受け答えをして、周囲の者に感銘を与えました。/
長年の政敵と言われた人スタントンを南北戦争の陸軍長官に任命したことに、参謀たちは真っ向から反対・抗議しました。リンカーンは語ります。「イエス様は、敵を愛せよと言われました。彼は、もう私の敵ではなく、こうすれば、敵もなくなり、能力のある人の助けを受けることもできるし、一石二鳥ではありませんか?」スタントンは、リンカーンを最も偉大な人物と尊敬するようになったのです。/
南北戦争に勝利した時、リンカーンは次のように告白しています。「北軍の勝利は、祈りの勝利です。私たちは、南軍のロバート・リー将軍のような名将がいなかったことは、むしろ良いことで、祈りによって神様にさらに頼ることができたからです。」
「神を愛する人々、すなわち、神のご計画に従って召された人々のためには、神がすべてのことを働かせて益としてくださることを、私たちは知っています。」
(ローマ8:28)
2016年9月14日 小坂圭吾